雪はためず、雨だけためる
積雪に強い雨どい「ユキノキ」を開発したのは、タニタハウジングウェア(東京都板橋区)だ。同社は3代目の谷田泰氏が社長に就任した翌年に、「雨のみちをデザインする」という新コンセプトを発表。その翌年の2005年に同製品を発売した。
むき出しになっている雨どいは、必然的に雪をため込む。そして往々にして耐荷重を超えてしまう。そこで、ユキノキは、雨どいにも「屋根」を付けた。特殊加工された「雨水ガイド板」が積雪を防ぎ、雨はキャッチするが、雪は下へ落とす【写真】。

「持続可能なものづくり」を重視する同社は、創業時から、劣化しにくくリサイクルしやすい自然素材である「金属」にこだわりを持っていた。ユキノキも、耐久性に優れ比較的安価なガルバリウム鋼板(溶融55%アルミ亜鉛合金めっき鋼板)に塗装した素材でできている。
雪対策が生んだ自然共生のカタチ
やがて、ユキノキが雪国以外でも役立つことが分かった。同社はユキノキ発売の翌年から、同じ形状の商品を「すとっ葉゜ー」としても発売。「ぱ」を漢字の「葉」に「°」付けた表記で商標登録した。すとっ葉゜ーは、その名が示す通り、「葉」を「ストップ」する。
そもそも、雨どいが住宅に付いているのは、雨水が屋根から直接落ちると不都合があるからだ。跳ね返る泥水で壁面が汚れ、軒下の土が雨にうがたれて庭の景観を損ねたり草木を傷めたりする。雨水のしたたる音がうるさく感じられる場合もある。
しかし、空から降ってくるのは雪や雨ばかりではない。舞い落ちる枯れ葉にとっては、雨どいが障害だ。土に落ちて分解されれば豊かな土壌を形成する葉も、雨どいに捕まった途端、手で取り除かなくてはならない厄介なゴミになってしまう。
すとっ葉゜ー(ユキノキ)の雨水ガイド板の表面には、水が瞬時になじむ特殊な加工が施されている。すっぽりと雨どいを覆い隠しているように見えるが狭い隙間があり、そこから、隙間より大きな落ち葉などを除く雨水だけが雨どいの中に滑り込む【写真】。

同社の実験では、1時間160ミリの降水条件でも、見事98.4 %の水量をキャッチできたという。なお、気象庁が「大規模な災害の発生するおそれが強く、厳重な警戒が必要」とする「猛烈な雨」は、1時間80ミリ以上を指す。
大きな葉っぱや枝が入りにくいすとっ葉゜ーは、落葉樹に囲まれた別荘地などでも使われている。窓いっぱいの緑や豊かな自然との暮らしに一役買う同製品は、まさにエコプロダクツといえそうだ。
雨をためれば、お金もたまる
日光も雨水も天の恵み。都市に暮らしていても、晴れの日には太陽光発電や太陽熱利用を、雨の日には雨水利用をすれば、その恩恵を実感することができる。
同社は、人間が利用できるのは地球上の水全体のたった0.01%というデータを踏まえて、貴重な真水である雨水の利用拡大に積極的に取り組んでいる。
水道インフラが発達した日本では、庭の水やりや洗車やトイレの流し水にまで、上水道の水を使っている。考えてみれば、これは相当ぜいたくなことだ。水道代もばかにならない。
雨水をとっておく「貯水」に楽しみを見出せば、雨の日が待ち遠しくなる。しかも、蛇口をひねる回数が減って、確実に「貯金」にもつながるだろう。
雨どいが集めた水を有効活用
住宅の雨どいは、屋根の雨水を効率よく集め、一気に下水道に送る。しかし、アスファルトに覆われた市街地では、台風や集中豪雨の増加とともに、下水道があふれる都市型洪水が深刻になっている。今や首都圏は、まるでSFのように、地下に巨大な貯水池を掘って雨水の襲来に備えている。
それでいて、エネルギーを使って浄化した水道水をふんだんに使っているとは、何とも皮肉だ。せめて、昔の日本家屋のように手水(ちょうず)鉢を玄関先に置いて、庭の草木の水やりや掃除や打ち水に活用したらどうだろうか。
同社が提案するのは、現代的な一般住宅に雨水利用を取り入れるツールだ。雨水取りだし口「パッコン」は、軒下の雨どいが地面に向かう垂直部分(たてとい)に取り付けるもの。既築住宅でもDIY(Do It Yourself)で導入できる。
パッコンの下に水がめを用意して、雨が降りそうなときに開閉できる注ぎ口の部分を、パッコン!と開ければ、屋根に降り注いだ雨を効率よく集めてくれる【写真】。

降り始めの雨は空気中の細かなゴミや屋根の汚れを含むので避けたいという人にも、開閉自由な同製品は便利だろう。水がめは、好みの壺(つぼ)でもバケツでもいいが、同社は耐久性に優れたステンレス製のタンクや、味わい深い信楽(しがらき)焼きの「信楽くんlite(ライト)」という雨水利用目的の器も各サイズ販売している。
賢く利用して雨の日を楽しく
信楽くんは、伝統技術を継承する職人が手作りしており、庭に置けば印象的なエクステリアの1つになる。雨水タンクを庭に常駐しておけば、いざというとき、防火用や非常用に役立つかもしれない。
サイズによっては特製ふたの付いたタイプもある。ふたをしたまま雨水を受け止められるので、落ち葉や虫などが入りづらい。また、日光が届かないので、水中に藻類が繁茂することもない。夏季のボウフラ(カの幼虫)増殖防止にも有効だ。
全国には雨水利用に取り組む市民団体も複数ある。自治体によっては雨水利用に助成制度を用意している。梅雨を迎えるまでの数カ月間、雨の活用法をじっくり検討してみるのも楽しい。
瀬戸内 千代(せとうち ちよ)/環境ライター(グリーンプレスクラブ所属)
【参考】
NPO法人 雨水市民の会 http://www.skywater.jp/
【取材協力】
株式会社タニタハウジングウェア
本社所在地 〒174-8601 東京都板橋区東坂下2-8-1
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